安部司の想い


私たちの社会は、戦後驚くほど豊かになり、便利・快適になりました。



しかし、今日の便利で快適な生活の「裏側」には、多くの化学物質があることを忘れてはいけません。

プラスチックには不可欠な「フタル酸化合物」などの環境ホルモン物質。

安く綺麗な輸入建材に使われる「ホルマリン」などの防腐剤


私たちの豊かな生活を支える一つが

化学物質であることは否定できない事実です。



食品においてもそれは同じです。



今のように、楽に簡単に食事ができるのは、それは添加物のおかげです。

いつでもどこでも、手軽に空腹を満たすことができるのは、添加物あってのことです。


もしこの世から添加物がなくなれば、食事をつくる時間と手間は何倍にもなるでしょう。

それにほとんどの食品が、値段が高くなり、見かけも悪くなり、長持ちもしなくなるはずです。



そんな便利さ・豊かさを支えるものには、

「光」と同時に「影」もあります。


毒性・危険性もさることながら、食や文化、そして心までをも壊してします力が添加物にはあるのです。

添加物の「光」を享受するのであれば、そんな「影」の部分からも逃れることはできないのです。



確かに私たちは豊かになりました。

あまりにも急に豊かになりすぎて、その快適さも薄氷の上にあるような気がしてなりません。


「夢の物質」とまで言われ、何十年も使われていたものが、

ある日突然「発ガン性があるから」という理由で使用禁止になったりもするのです。



日々生活は、便利、快適、豊かになっていき、得るものも多いのも事実です。


しかし、その「裏側」で、人間として、日本人として、

失ってはいけない大切な何かを確実に失いつつあるのではないか


---私にはそのように思えてなりません。



いったい私たちは、何を得て、何を失っているのか。


それを考える、ささやかな契機になることを、願ってやみません。



「食品の裏側」(東洋経済新報社)安部司著 より抜粋